君は無垢なフリをして​───本当は野獣。

ドサッという音と共に、２人して廊下に倒れる。



「綾香…痛いよ。」


「えへへっ。ゴメンね、花菜ちゃん。」



私の上からゆっくりと退く。


土居 綾香(ﾄﾞｲ ｱﾔｶ)、１９歳。


大学１年生の私の従妹。



「私は綾香みたいに受け身はとれないんだからね？」


「花菜ちゃんに会えたから、嬉しくってつい…」



立ち上がって歩き始めた私の隣で、綾香はそう言って笑う。


私よりも小さくて、ふわふわした雰囲気が可愛い綾香。


だけどそんな綾香は、実は柔道の有段者。


見た目が可愛いから寄ってくる男の子はたくさんいるみたいだけど、いつも綾香に投げられているみたい。



「私も綾香に会えて嬉しいけど、次からは抱きつき方に気を付けてね。」



私が諭すと「はぁい。」と笑顔で答えた。