君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「あ。そうだ、花菜ちゃん。理事長さんが呼んでたよ?」


「理事長?」


「うんっ。私が花菜ちゃんの従妹だからって伝言を頼まれてたの。」



綾香の言葉に首を傾げる。


私…何か悪いことでもしてたかな?



「暇になったらでいいから今日中に理事長室に来てねって。」


「うーん、分かった。今暇だから、今から行ってくるね。」


「うん。行ってらっしゃーい。」



大きく両手を振る綾香に背を向けると、私は小走りで理事長室に向かった。



――コンコン。



理事長室の前に立つと、控え目に扉をノックした。



『どうぞ。』



少しくぐもった声がドア越しに聞こえると、恐る恐る扉を開ける。


扉の向こうには、理事長椅子に腰かけた鬼塚理事長の姿があった。


御年62歳。


何とも言えない威厳が漂っている。
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