君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「あぁ、山崎 花菜さん。来てくれたんだね。」



こっちへおいでと手招きをしながら、顔を(ほころ)ばせる。


先ほどまでの怖い表情から一転、優しそうな笑顔だ。



「し…失礼します。」



緊張しながらも理事長机に近づく。



「急に呼び立てて悪かったね、山崎 花菜さん。確か貴女は入学当初から首席として成績優良者だったね。」


「は、はい。」


「そんな君を見込んで頼みがある。」


「頼み…ですか?」



私の問いに理事長はフッと微笑む。



「私の孫…カグヤというんだけどね、孫と一緒に暮らしてほしいんだ。」



理事長の孫…


カグヤって、女の子…?



「嫌、かね?」



理事長が心配そうな面持ちで聞く。



「嫌、というか…何故、一緒に暮らさなければならないのかは聞いても良いでしょうか。」



「詳しくは私からは言えないのだけれど、あの子は最近一人暮らしを始めたばかりでね。心配なんだ。」


「心配…」


だからって他人で学生の私…?


「勉強もついていけているのか、ご飯も食べられているのか、部屋を綺麗に出来ているのか…そこで寮生活で寮母さんからの評判も良いし成績優秀な君ならば、と思ってね?」


――――だいぶ理事長はじじバカのようではあるが思っていたよりも評価されていたのは単純に嬉しい。

どんな子かは分からないけど要するにまともな生活を送らせて、勉強も教えて欲しい、と…。

まぁ、女の子なら大丈夫か。




「…分かりました。一緒に暮らします。」
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