君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
理事長直々に頼まれたら、断れないよ。



「貴女ならそう言ってくれると思っていたよ。」



そう言って理事長は満面の笑みを浮かべる。



「貴女のいる、寮の手続きは私がしておこう。今日から貴女は別の場所で暮らしてもらうよ。」


今日から?!
今決まったのにいくらなんでも早く無い…?

疑問には思ったけど…やっぱり、とは言えない雰囲気。

1度決めた事だし…覚悟しなきゃ。



「…はい。」


「うん、ありがとう。地図を渡すから、19時を過ぎたらその場所に行くように。
荷物とかは運んでおくから、19時まで何処かで時間を潰しておくといいかもしれない。」



ニッコリ笑う理事長…


覚悟したのも束の間、その笑顔に少しだけ不安になる。


私を見込んで孫と同居してくれって…心配なだけじゃなくてその孫はよっぽど素行が悪いのかな。

私、上手くやっていけるのかな…



「あの…失礼しました。」



理事長室にいるのが窮屈に感じ始めた私は、挨拶をするとそそくさと理事長室を出た。



「山崎さん、貴女(あなた)の健闘を祈っている。」



理事長室の扉が閉まる直前に理事長から発された言葉。


健闘を祈るって…


余計不安になるんですが。
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