君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「あら?お客さんかしら。」


「私、出るね。」



母さんの呟きに、率先して席を立つ。


にしても、綾香の妙な電話の後のこのタイミング。


何か引っ掛かる。


〝凄い剣幕で――…〟


〝気を付けてね〟


一体綾香は誰に何を教えたのか―――…



「どちら様ですかー…?」



――ガチャ…











「――――ハッ…ハァ…っ」



扉を開けた瞬間目に入ったのは……



「中野、神弥…?」



息を荒げて、僅かに汗を滴らせている。



「花菜…っ」


「きゃっ」


「何で勝手に出てってんだよ…ッ」



悲鳴を上げる暇もなく、中野 神弥に抱き締められる。


頭上から響く声に、荒い呼吸に、何故か胸が早鐘を打つ。
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