君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「【…ごめん、花菜。】」


「ううん。大丈夫。」



シュンと項垂れる崇大に笑いかけると、中野 神弥に視線を移す。


と、中野 神弥は不思議そうな顔。



「何でもないの。…帰ろっか。」


「…あぁ。」



今度は私が中野 神弥の腕を引く。



「あら?花菜、どこ行くの?」



遅れてリビングに入ってきた母さん。



「帰るの。明日も大学あるし。」


「そう。あ、お父さんに送ってもらう?」


「え?父さん、帰ってきたの?」


「丁度、今ね。」



母さんは私の後ろに視線を向ける。


と、きちんとスーツを着こんでいた父さんが、ネクタイを弛めながらリビングに入ってきていた。



「何だ?帰ってたのか、花菜。…誰だ?」



父さんは中野 神弥を見上げる。


と、



茉吏(まつり)さんの若いときに似てるな。」
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