ある冬の日の物語



冬川の声で車に轢かれそうになることに気づく。



ああ。もう遅い。

だけど、これで蝶子がいる場所にやっといけるのかな。

やっと蝶子に会えるんだ。



キキーッ


瞼をそっと閉じる。


痛く、ない?


「いった………」


冬川が陽斗を庇ったのだ。


「お前……大丈夫か!?何考えてんだよ!!」


冬川は起き上がり、ビンタをした。


「私がいいたいセリフよ!!何考えてんのよ!!」


冬川の剣幕に血の気が引いた。


「蝶子ちゃんがそんな陽斗くんを見て喜ぶと思ってるの!?」

「冬川………」

「お願いよ……陽斗くん」


錯覚なのはわかってる。

だけど、冬川が蝶子に見えてしまった。

< 25 / 29 >

この作品をシェア

pagetop