ある冬の日の物語
母親の呼ぶ声でようやく制服に着替える。
彼女がいなくなったあの日から、魂が抜けたようで…生きているのが苦しくて仕方なかった。
1階に下りて母親と顔を合わせる時は決まった行動を取る。
「おはよう。陽斗。よく眠れた?」
「母さん。おはよう。まだ寝ていたい気分だけどね」
全く思っていないことをケラケラと笑いながら食卓についた。
違う人格を演じる…これも一つの日課になった。
いつまでも落ち込んでいる姿を見せたら心配性な母さんが心配するから。
だから、自分は大丈夫だとあえて演じている。
今日の朝食はトーストと目玉焼きに牛乳。
あまり食欲はないが平らげ、鞄を持って家を出た。
「受験近いけどあんまり無茶しちゃダメよ?」
「わかってる」
「じゃ行ってらっしゃい」