ある冬の日の物語



母親と視界が合わなくなって再び魂が抜けた状態になった。


北野 陽斗。普通の中学生。もうすぐ高校受験を控えているが、受験する気は全くない。

将来何がしたいのか、今後生きていく意味も見いだせないでいる。

いっそのこと……彼女がいる場所にいこうかとも思えてくる。

だけど、彼女に怒られそうだから今は止めておこう。



ひと月前………付き合っていた彼女の蝶子は不慮の事故で死んで帰らぬ人となってしまった。

突然のことで頭が真っ白になって泣く暇すら与えてもらえなかった。

同じ高校に合格しようね、と誓い合ったはず。

だけど、そばにはもう蝶子はいない。

裏切られた気がした。

約束を破られた気がした。

だから俺は受験しないし、何がしたいのか正直わからない。

生きている意味がわからない。

蝶子がいない世界にいたって意味が無いから。

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