&フィクション
死に損ないに秋
「夏、終わった?」
誠が言って、振り向いた。
「まだ暑いから、夏。であってほしい」
「終わりかけか」
うん、そうじゃない。うなずいて、また前を向いてしまった後頭部を見つめる。
誠の家で、誠の部屋で、誠のベッドに腰掛けるあたしと。
そのベッドのすぐそばの床で胡座をかく、誠と。
「なんで隣来ないの?」
「んー、内緒」
「なんで?」
「なんで攻撃かよ」
小さく笑って、立ち上がってしまう。
誠の部屋に来るのはこれが初めてで、何せあたしたちは付き合っていないのだから。
「思春期だから?」
「難しいから」
「……何が?」
難しいって、何。どういうことなの。
「──いろいろ」
誠はよくわからないひとだ。
掴みどころがないだとか、雲みたいだとか、そういう言葉が適応されない。ただただ、よくわからないのだ。
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