&フィクション



「夏の終わりかけって、なんか、くるしくなんねぇ?」



何が。どういうふうに、誠。



「死にたくなる、って、こと?」

「んー、そ、かも」



呼吸が一瞬つまって、指先にちからがこもった。



「夏が遠くなってって、めちゃくちゃ死にたくなるんだよな、なんとなく。でもそのくせして、うだるような暑さが消えてくからさ、息しやすくなるじゃんか」



なんないよ、わかんないよ、あたし。



あたし、誠のこと、すきなのに。



そんなこと言われたら、あたし、どうしたらいいの。



「べつにさ、いまに不満がありまくるってわけじゃないんだけど。なんでだろ、ほんと、なんとなく」



パチン。



軽い音がして、また、爪が切られる。



この音がなったのは、まだ、4回目。



この場をまったくもって明るくしないくせして、明るい音だけは響かせるのね。



まぶたをきつく閉じる。


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