生きていこう。それがいいんだ。
やっぱりこの子はただのお調子者じゃない。
必ず来ると信じていた長くんからの“吉報”で、また一つの“事実”が僕達の武器に加わった。
「ゴホッゴホッ!
やはりこの犯人さんは強敵ですね。」
「はい・・。
立石さんが証言した“刺された順番”。
利き手を誤魔化す企みが見えたとはいえ、
“最初は右手で包丁を持って、
左脇腹を刺してきた”
という点から、
右利きかもと思ってましたが・・
僕達にそう思い込ませるよう、
そんなところにも気を配り、
わざと自分の利き手とは逆の一撃目を食らわせたのかもしれません。」
「しかしまぁ・・・何と表現したらよいか分かりませんが、
完璧と思われた犯人さんは、
“物”に関する警戒心が薄いですね。」
「・・・と言うと?」
「両刃の三徳包丁を使っていれば、天才鑑識官に完全勝利できていたかもしれません。
どうもこの犯人さんは・・
【犯行のやり方】にはかなり知恵を振り絞った感が垣間見えますが、
【犯行に使う物】には無頓着だったんでしょうか。」
「確かに・・一貫性が無いですよね。犯行自体は完璧だから余計に浮き彫りになってます。
・・・これも“あえて”で、
犯人の何らかの意図でしょうか・・?」
「大切な仲間が見つけてくれた手掛かりです。
ひとまず裏読みはしないで、
ストレートに“犯人は左利き”として、
リストを絞りましょう。」