生きていこう。それがいいんだ。


「・・・・・・・・・・・。」


「はいっ。お会計824円になりまぁーす。」


何食わぬ顔でレジを済まして、
何食わぬ顔でエコバッグへ詰める。


状況を察知するこの“五感”と同様に、
コンマ数秒で事を為すこの“手癖”も、

年々のように上達していくのを感じた。


盗撮も万引きも、
今まで一度もバレたことは無い。


・・・別に誇らしくも無いし、
何の自慢にもならないけど。



「・・・・・・・・・・・・。」


最後まで気を抜かず、
エコバッグを持って出入り口を抜ける。


店内から外の世界へ。


もし万引きGメンが居たら、
私の犯行がバレていたら、

お店を出た瞬間に確保される。




「・・・・・・・・・・・・。」


後ろから呼び止められない声。


背中越しにお店がどんどん小さくなっていきながら、私の歩を邪魔する人間はいない。


無事に、今日も節約に成功す・・・



「スゲーな。君のその手癖。」


「!!!?」


「・・・・・・・・。」

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