生きていこう。それがいいんだ。


―――――― 




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「・・・シクシク・・グスン・・・。」


「どうしたのミ~ホっ。」


「別に・・何でもないから。」


「“ベランダに出て一人で泣きながら梅酒飲む”・・なんて、

いかにも、“何かありました”感が漂ってるんだけど。

ていうかサラッと流しそうになったけど、ミホまだ18だから梅酒飲んじゃダメだからね?」


「・・・・・・グスン・・・。」


「・・・・・地元が恋しくなった?」


「ねぇお兄ちゃん・・。」


「うん?」


「遠距離恋愛って・・
・・難しいんだね・・。」


「あぁ~なるほど・・。
ひょっとしてカイト君と別れた?」


「もう無理。もうダメ。もう死ぬ・・。」


「ミホが死んだら俺、絶対発狂するからそれだけは勘弁してよ。」


「・・ハァァアアアアア・・私・・明日から何を生きがいに頑張ればいいの・・?」


「とりあえず・・ハーゲンダッツ?」


「ねぇワンちゃん飼おうよ。
ここの部屋、ペット大丈夫?」


「いや、ダメ。それにもし大家さんが許してくれたとしても、

人間の勝手な気まぐれで、
簡単に飼っちゃダメだよ。」


「・・ハァァアアアアア・・

未成年はお酒飲んじゃダメ。
失恋直後にワンちゃん飼っちゃダメ。

お兄ちゃんってなんでそんな真面目なの?」


「あ~・・忘れてるかもだけど、
一応こう見えて弁護士目指してるからね?

法律とか倫理は守らなきゃダメだよ?」


「・・・プリン泥棒のくせに・・。」


「もうあれは示談金無しの和解で解決したからね~。」

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「おかしいねぇ・・。
いや絶対におかしいよ。」


「二人組は犯人じゃないんですか・・?」


「まず馬鹿二人組についてなんだけど、
急~~~に大人しくなったんだよ。

いやオイラね、
1人ずつ直撃してみたんだよ。

“卒業記念はもう果たしたんですか?”、“だからあとは真面目に卒業まで過ごすんですか?”

って。まぁ~奴らビビってたねぇ。

警察じゃなくてオイラみたいな記者への対応は想定外だったってところかね。」


「高松さんの揺さぶりに引っ掛かったって事は・・やっぱり・・。」


「ただね・・引っ掛かるのがもう一点。
警察の動きなんだよ。

いやオイラね、捜査を担当してる所轄に潜りこんだんだよ。

“便所張り”って言って、こそっと署内の男子トイレに入って個室に籠もる。

そんで、気が抜けた捜査員が“連れション”で談笑しながらやって来るのをじっと待つ。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「そうしたら・・思わぬ大物が、
署長と一緒に便所に入ってきた。

扉一枚挟んで姿は見えなかったけど、あのドスの効いた声は聞いただけでも分かったよ。」


「誰ですか?」


「この国の警察の頂点に君臨する男・・

井川 警視総監・・
名前聞いてもピンとこねぇかな?」


「“警視総監”っていう役職がどれほどの重みがあるかは分かります・・。」


「なんであんな所轄にわざわざ警視総監が出向いてたのか・・引っ掛かるねぇ。

妹さんの事件は、“精液”、“索痕に残った指紋”、“衣服についた指紋”、“防犯カメラ”

証拠のオンパレードだってのに、一向に進展しないのと無関係だとは思えないねぇ。」


「まさか・・・“揉み消し”・・・?」


「いやぁ~・・普通に考えればそうなんだけどその可能性は無い。

というかそんな事をする理由が無い。」


「どういう事ですか・・?」


「馬鹿二人組なんだけど、
オイラが調べたところ、

な~~んも無い、
いわゆる“下等国民”だった。

親はただの会社員とか、
兄弟に有名人がいるとかも無い。」


「・・・・・・・・。」


「だからあの馬鹿二人組を庇う理由が無いんだよねぇ。

警視総監が動くなんてよっぽどだからね。」


「じゃあ結局・・
真相は闇の中ですか・・?」


「タケル。オイラを甘く見ちゃダメだぜぃ?」


「え・・・・?」


「こっからが本領発揮よ。

馬鹿二人組と、
所轄の刑事達にもう少し突っ込んでみる。

どっちも駆け引きで言えば素人だからよぉ。

それに、人間はそんな簡単に“かん口令”に従えねぇ。

必ず心のどっかにある“良心の呵責”を突いてみる。」


「ありがとうございます・・
ミホと・・俺の為に・・。」


「へっへっへ。オイラにも妹がいてねぇ。

だからタケルの気持ちはちょっとは理解できるぜ。」


「・・そうだったんですか・・。」


「来年赤ん坊が産まれるんだ。

とりあえずオイラの代わりに次の跡継ぎ作ってくれて一安心だよ。」


「・・・妹の子供ですか・・・。多分・・同じように溺愛するんでしょうね・・。」


「へっへっへ。オイラもそう思う。」























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