生きていこう。それがいいんだ。
第2章
第2章
ベンチに座って、全身に押し込んでいたメイク道具をエコバッグへと移していく。
入り口に設置されている、
この公園内に一つしかない電灯の僅かな光が私達を微かに照らしていた。
「じゃあまずは自己紹介からしようか?」
「座らないの?」
「まだ会って10分も経ってない男に隣に座られたらイヤでしょ?」
そんなに大きくないベンチ。
隣り合って座ったら、もしかしたら肩と肩が触れてしまうかもしれない。
佐藤健男はそこには座らず、
少しだけ距離を置いて私の前に立つ。
「なに?紳士ぶってるつもり?
別に警戒してないし、襲ってきたら受け入れるフリして噛みちぎってやるから。」
「君はあれだな・・
なかなか達観してるね。」
「さっきの万引き、どこで見てたの?
あの時・・あなたに見られてるなんて全然気付かなかった。」
「タケル。」
「・・・・・・?」
「俺の事はタケルって呼んでよ?“あなた”なんて行儀良く呼ばなくていい。」
「・・・・自称佐藤健似だから?」
「ハハッ覚えやすいでしょ?
君も偽名使って大丈夫だよ。」
「黒田シズカ。」
「え・・・・・。」
「保険証見せようか?
私は別に名前を偽らなくていい。」