生きていこう。それがいいんだ。


―――――― 


「・・スッ・・ウゥゥ・・スッ・・・。」


どこでも良かった。
高ければ高いほどそれで良かった。


滲みながら進んでいった視界。
目についた高層マンション。


階段を駆け上がったら・・
拓けた屋上へと繋がった・・。




「・・スッ・・ヒック・・・・。」


もう“人目”を気にしなくていい場所まで来れたから、声に出して嗚咽が漏れていく。


駆け出した両足が再び“歩”へと変わったまま、拓けた屋上の縁に立つ。




“・・・・・・・シズカ・・”


「・・“さよなら”なんて・・・
・・・言わないでよ・・・・。」



もうこの先には“地面”は無い・・・。

もうこの先には“地”と“空中”の隔ては無い。




「・・スッ・・ヒック・・ちゃんと・・
可愛らしくメイクしたんだから・・

ちゃんと・・“お気に入り”のワンピース着てきたんだから・・

私だっで・・スッ・・人を殺じだがら・・
ちゃんど・・地獄に堕ぢれるんだがら・・

“これでお別れ”なんで・・
勝手に決めづげないでよ・・。」




ボタボタと落ちる滴が・・
10階から下の地面へと落ちていく・・。


見下ろした視線の先で、
人や車が豆粒みたいに行き交っている・・。



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