生きていこう。それがいいんだ。
『ひょっとして・・その“力”が原因か?』
「覚悟の上です。
刑事課に異動して・・
豊川さんと出会ったその初日に、
あの人も忠告してくれた上で選んだ道ですから。」
『・・・・・・まさか・・・?』
「はい。とうとう僕も、豊川さんとほぼ同じところまで来ました。」
『ついに完全に開花したか・・・。』
「“ゾンビ映画に自分一人だけが紛れ込んだ気分”
豊川さんが言っていた意味がよく分かりました。
今では、豊川さんに懐いていた踏切の血まみれ少年は、
僕を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきます。」
『街に溢れてるのは俺達みたいな気楽な死者ばっかりじゃねぇからなぁ。』
「でも、それで精神的な負担が増えてるわけでは無いんです。」
『どういう事だい?』
「豊川さんは徹底的に“無視する”という手段を取ってますが・・。」
『ワハハ。テツは俺たち死者の事が大っ嫌いだからなぁ。』
「僕は、なるべく一人一人と向き合ってます。」
『・・・・は!?』
「物心ついた時から、“命”・“魂”について学んできた身ですから。
“救おう”なんて大それた事は考えてませんが、
なるべく彼・彼女達の“声”に耳を傾けたいんです。」
『お前はホント・・観音菩薩様の生まれ変わりみたいな男だな・・。』
「お陰で、“寝不足”だったこの身が“超寝不足”になって、
目にクマができちゃいましたけどね。」