生きていこう。それがいいんだ。
「すみません。聞いてもいいですか?」
「はい。いらっしゃいませ。」
目的地②
“婦人服売り場”という言葉が似合う、
30代から上の客層が多く行き交うお店へと入った後、
さっきと違ってガツガツしない店員を私のほうから呼びつける。
「お母さんに新しいヒールをプレゼントしたくて、どれかお薦めはありますか?」
「あ、はぁ~い。ご案内しますね。」
このフロアで最大規模の面積を誇るこのショップには、服は勿論だけど、
小物雑貨やたくさんの靴も揃っている、
私が重宝している場所だった。
「こちらが今一番人気のヒールですっ。あのコシノさんがデザインした物なんですよ~。」
36歳ぐらい。本田翼がそれぐらい歳を重ねたらこうなる・・
と想像がつくショートカットの美人な店員さんが、
商品棚の一番上に置いてある物を手に取る。
「あ、あの色。
お母さんが好きな色です。」
だから棚の“一番下”に配置されていたあまり人気の無さそうなヒールを指さした。
「こちらは靴擦れが起きにくい加工がされていて、幅広い方にお使い頂いてます~。」
「あ、こっちの方も形が可愛いですね。」
「はい~。こちらは・・・・。」
15分程。ひたすら棚の一番下に配置されていた靴を指さして、
次から次へと本田翼店員の手に取らせる。
「・・・・・・・・・・・・。」
掛けていた眼鏡のズレを直しながら、
店員さんと一緒に商品を選んだ後、
「ありがとうございました。また来ます。」
何も買わずにお店を出た。