生きていこう。それがいいんだ。


「すみません。聞いてもいいですか?」


「はい。いらっしゃいませ。」


目的地②
“婦人服売り場”という言葉が似合う、

30代から上の客層が多く行き交うお店へと入った後、

さっきと違ってガツガツしない店員を私のほうから呼びつける。


「お母さんに新しいヒールをプレゼントしたくて、どれかお薦めはありますか?」


「あ、はぁ~い。ご案内しますね。」


このフロアで最大規模の面積を誇るこのショップには、服は勿論だけど、

小物雑貨やたくさんの靴も揃っている、
私が重宝している場所だった。


「こちらが今一番人気のヒールですっ。あのコシノさんがデザインした物なんですよ~。」


36歳ぐらい。本田翼がそれぐらい歳を重ねたらこうなる・・

と想像がつくショートカットの美人な店員さんが、

商品棚の一番上に置いてある物を手に取る。


「あ、あの色。
お母さんが好きな色です。」


だから棚の“一番下”に配置されていたあまり人気の無さそうなヒールを指さした。


「こちらは靴擦れが起きにくい加工がされていて、幅広い方にお使い頂いてます~。」


「あ、こっちの方も形が可愛いですね。」


「はい~。こちらは・・・・。」



15分程。ひたすら棚の一番下に配置されていた靴を指さして、

次から次へと本田翼店員の手に取らせる。



「・・・・・・・・・・・・。」


掛けていた眼鏡のズレを直しながら、
店員さんと一緒に商品を選んだ後、


「ありがとうございました。また来ます。」


何も買わずにお店を出た。




















< 4 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop