生きていこう。それがいいんだ。
「【先入観】を植え付ける。」
「・・・・・・・・・。」
「入念な準備無くして成功はあり得ない・・でしょ?
馬鹿息子が仕事で家にいない時間を狙って、奴の家に電話を掛ける。」
「・・・・・・・。」
「当然、電話には奥さんが出る。
だから無言で電話を切る。
それを何回も繰り返す。
頃合いを見て、こっちの“必ず殺す”って声を聞かせる。」
「・・・・・・・・・。」
「絶対に奥さんは馬鹿息子に相談するはず。
“最近、変な男から無言電話が掛かってくる”、“「必ず殺す」って言われた”
そうすれば・・・。」
「馬鹿息子は、電話の相手はタケルに違いないって怯え始めるかもね。」
「俺っていう証拠があるわけでも、
姿を現わしたわけでも、
目撃証言が出たわけでもないから、
接近禁止令の効力は発揮できない。
あとは犯行前夜ぐらいにダメ押しで、俺とバレない程度に一度だけ夜道に“影”を見せる。
・・・これで馬鹿息子は完全に、“ミホの兄貴が自分の命を狙ってる”と発狂する。」
「あとはXデーにタケルは完璧なアリバイを作って、
私はヘルメット被って顔が見えないようにして、厚底靴を履いて身長を誤魔化して、
馬鹿息子を刺せばいい?」
「相変わらずシズカは物わかりが良いね~。」
「確かに・・これなら馬鹿息子はタケルが自分を殺したと思い込むね。
事件後に警察が奥さんに“最近変わった事はあったか?”って聞き込みすれば、
当然、無言電話の件も話すだろうし、一石二鳥で“男が殺した”と刑事達は考える。」