生きていこう。それがいいんだ。
「・・・・・・・・・・・。」
お水のお代わりを注いでいると、
お互いの器を交換して、お互いが注文した麺を一口ずつ食べている。
店内に入ってまだ数十分だけで、
この二人は普段から一緒に買い物に出掛ける仲の良さだと分かる。
もしかしたら度々、父親に留守番させて、
一緒に温泉旅行へも行っているかもしれない仲の良さだと分かる。
「・・・・・・・・・・。」
もしかしたら、あの母娘の光景が世間から見たら“普通”なのかもしれない。
だけど私の物差しで見たら、
“異常”に思えてしょうがない。
公園で一緒に遊んだ記憶は無い。
遊園地に連れていってもらった記憶は無い。
誕生日ケーキのろうそくを吹き消した記憶は無い。
授業参観ではいつも、
他人の親の視線しか感じずに、
運動会ではいつも、
隅に独り座って食パンの耳を食べていた。
“あんたなんて生まれてこなければ良かった”
ハサミで適当に切られていたので、美容院へ初めて行ったのは15を過ぎてから。
“あんたなんて生まれてこなければ良かった”
勿論・・ああやって外食先で・・・
・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・。」
お互いに頼んだ料理を一口シェアするなんて記憶は全く無い。
「1,580円ちょうど頂きます。
ありがとうございました。」
「ご馳走様~。」
「ご馳走様でした~。」
「お気をつけてお帰りください。」
2人分とはいえ、一食で1,580円。
“美味しかったね”と笑顔を見せながら店を出て行くあの二人は、やっぱり異常に見えた。