生きていこう。それがいいんだ。
「長くんおはよう。」
「うぃーーっす。
相変わらず寝不足のヨシトくんに、
相変わらずのテツさん。
もう最近は霊視コンビじゃなくて、
体調不良コンビっすね!」
今日も鑑識帽を真逆に被って、
HipHopを体現しながらノリノリで鑑識作業を続ける長くんにからかわれたところで、
豊川さんと一緒に死体へ合掌する。
アスファルトへ染みこむ、
おびただしい血痕。
見ただけで分かる三カ所の刺し傷。
長くんに確認するまでもなく、
被害者の死因は察しが付いた。
「長くん、凶器は落ちてた?」
「無かったっす。
“ためらい傷”も見当たらないし、
今のところ犯人に繋がりそうな痕跡も落ちてないし・・
ある意味プロっぽい仕業っすね。」
「・・豊川さん、どう思います?」
「右脇腹。左脇腹。左胸。
手際が良いだけではなく、
かなり賢い人物かもしれません。」
「と言うと・・?」
「左胸は心臓を狙ったトドメと考えてよいでしょう。
問題はお腹に見られる2ヶ所の傷。
あくまで推測ですが、まずは被害者の身動きを封じる為に刺したと思われます。」
「・・・・・。」
「更に、“利き手”を悟られないようにする目的もあったかもしれません。
右脇腹だけだったら犯人は左利き。
左脇腹だけだったら右利き。」
「両方だからどっちもあり得ますね。」