生きていこう。それがいいんだ。
リアル病人とTHE公務員との、
“THE他人行儀”な会話を聞きながら・・
なんとなくだけど、
今の状況が飲み込めた・・気がする。
板尾警部がお仲間の元へと戻っていく姿を見ながら、小声で豊川さんに尋ねる。
「立石ヤストシって言ったら、
文部科学大臣の・・!?」
「さすが、星野君は寝不足ながらもちゃんとニュースを見ているんですね。」
「まさかあの被害者が・・。」
「どうして静岡にいたんでしょうね。
政治家の家族というと、都内で温々と暮らしているイメージでした。」
「・・・県警の人と一緒に捜査するのは初めてです。
板尾警部とはお付き合い長いんですか?」
「嫌いではありませんが、
決して好きではありませんね。
彼はとにかく謎が多い男です。
当たり障り無いと言えばそれまでですが、無味無臭な人間ほど怖いものはありません。」
「豊川さんにそこまで言わせるお方とは・・。」
「もう一つ。以前君にも詳しくお話しした20年前の女子中高生連続殺人事件。
当時の板尾刑事は県警の方々の中で唯一、私たち所轄に対して友好的でした。
しかし今思うと、
彼は県警派でも所轄派でもなく・・
第三の派閥の人間だったかもしれません。」
「・・その話で言うと、
少し前に愛知県警が暴いた検察の不正疑惑の件が記憶に新しいですね・・。」
「杉内さんの死や、満島さんの犯行にはかなり驚かされましたが、
静岡県警の関与は一切の証拠が無く、
誰もお咎め無しですからね。
板尾警部の一人勝ちという見方も出来ます。」