生きていこう。それがいいんだ。
「犯人の顔を見ましたか?」
『・・・・いや・・・
ヘルメットを被ってた。』
「ヘルメットというと・・工事現場の人が被っている物ですか?」
『んなわけねぇだろ。
バイク用のフルフェイス。』
「では他に何か外見の特徴はありましたか?」
『暗かったからよく分かんなかったけど、スポーツウェアみたいなジャージを着てた。
あと多分、手袋も。』
「身長は?」
『そんなところまで咄嗟に記憶するわけねぇだろ・・。
でもまぁ・・でかくも小さくも無かった。
俺と同じぐらいだったと思う。』
「では、性別は断定できませんね。」
『・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・。』
「どうしました?」
『・・・・多分・・男だ。』
「どうしてでしょうか?」
『・・・・・・・・。』
「犯人に心当たりがあるんですか?」
『・・・・いや、無い。でも雰囲気とかそういうのは多分・・男だった。』
立石さんから話を引き出す豊川さんもきっと・・僕と同じ事を思ったかもしれない。
というより・・今だけは僕が普段の豊川さんに引っ張られている。
【被害者は、嘘をつきます。】
今の一瞬の間。
“空気”ながらも変化した表情。
“犯人に心当たりは無い”
でもきっと・・立石さんは犯人の心当たりがあるに違いない。
「立石さん。何か僕達に言っておきたい事があったら遠慮無く言っても大丈夫ですよ?」
そう思ったので・・
僕から一歩踏み込んでみる。
『・・・・・・・・・。』
「失礼ですが、先ほどあなたの口からも出たように“調べれば分かる事”だったら、
早めに教えて頂けると、
僕達も捜査がはかどって助かります。」
『・・・特に無い。それに・・・・』
「・・・・?」
『叩いても埃は出ねぇぞ?』
「ゴホッゴホッ!分かりました。
では何か思い出したことがあったら、
また姿を見せてください。」
『・・・・・・・・・・・。』