生きていこう。それがいいんだ。


「テツさん、ヨシト君。
今回はオレの出番は無いかも・・。」


「それは弱りましたね。“物的証拠”が無いと逮捕状が取れないかもしれません。」


豊川さんがポリポリと頭を掻きながら漏らしたように、

確かに・・今までどんな事件にも必ず“決め手”が僕達の武器としてあった。


長くん頼みと言われたらそれまでだけど・・

でも、鑑識班が見つけ出す“被疑者”⇔“犯行”を結びつける“物証”がいつも最後に、

水戸黄門の印籠のように出されて捜査は〆られる。


それが無いということは・・容疑者が浮上しても詰めきれない恐れもある。



「長くん。月並みな言葉ですが、
一言申し上げてもよいですか?」


「うぃっす。」


「何でもいいので、
絶対に見つけてください。」


「うっへぇ~・・実はテツさんが一番スパルタなの忘れてたっす。」




ギブアップ宣言を取り消して、

“ヒュー!”と気合いを入れ直した長くんから“吉報”が来ることを信じて、

ひとまず部屋をあとにする。

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