冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
試食したときは
とてもクリームが多くて甘さが協調されていたのに
今食べているのは、それがない。
それどころか
甘すぎずとても食べやすい味に仕上がっている。
「この菓子を…
以前どこかで食した事があるのですか?」
不思議に思った店の男が
イトカに問い掛ける。
「えっと…前に1度だけ。
あの時より甘さが落ち着いていたので
ちょっとビックリしました」
何気なく答えるイトカに
初めこそ驚いた様子だったが
『そうなんですね』と
また爽やかに微笑んだ。
「貴方がこのお店の職人さんです?」
「…いえ。
私はただの見習いですよ」
恐縮そうに答える男に
さほど疑う事もなく
『確かに若そうだもんな』と
勝手に納得していた。
「ご馳走様でした。
また買いにきますね」
「はい、ぜひ。
お待ちしております」
他に幾つか購入し
一礼する彼に軽く会釈をすると
挨拶まわりだったにもかかわらず
婚約している事も告げず
お土産に喜びながら帰還。
後日
そんな”見習い和菓子職人”と
思い掛けない場所で再会を果たす―――