冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】

―――コンコン


「失礼致します」


控えめに扉を2回ノックし
社長室へと入ってきたのは
先日イトカが訪問した和菓子店の男。
前回とは違う余所行きの和装だ。


「え…貴方は確か…
 和菓子屋の見習いさん…?」

「はい。
 先日はありがとうございました」


またあの爽やかな笑顔を向け
背筋良く綺麗な姿勢で一礼され
イトカも慌てて頭を下げた。


どうして見習いがココにいるのか
挨拶を交わしながらも未だ状況が掴めずにいると
社長はイトカの発言に難しい顔をした。


「”和菓子屋の見習い”なんて
 随分と身分を偽ったな、西園寺」

「そうですかね?
 事実、同じような事かと。」


”西園寺”と呼ばれた男は
あいかわらずニコニコしたままで
社長は『まったく…』と呆れている。

その会話に更に混乱が生じ
イトカは話が見えない。


「え、どういう事です?
 見習い…じゃないって事ですか?」

「あぁ。
 その男は見習いどころか
 あの和菓子屋の御曹司であり職人だ。
 それも相当な腕利きのな」

「嘘!?」


社長に改めて事実を聞かされ
あまりの驚きに思わず声を張ってしまった。
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