冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】

それは先日
彼の店で新作として食べた
”試食で味見した和菓子”の事だ。

もちろんその菓子を作ったのは
西園寺本人。

それを理解したイトカは…


「私、もしかして…
 試食でとんでもない事を言ったんじゃ…」


青ざめ頭の中が真っ白になりながら
社長に視線を移すと
彼はニヤリと笑って言う。


「そうだな。
 西園寺にはしっかり伝えておいたぞ。
 『高カロリーで甘すぎだ、作り直せ』と」

「そこまで言ってないッ
 社長、話を盛らないでください!」


だが言った事は強ち間違っていないため
『最悪だ…』と肩を落とした。


「あの試作を食したのは
 やはり貴方だったのですね。
 とても参考になりましたし
 有難かったですよ。
 作り手としては
 素直な意見が聞ける事が1番なので。
 そのための試作ですし」


決して怒らず
ニコやかな笑顔で感謝されてしまい
西園寺が天使に見えてくる。


「ですが最初は驚きました。
 世に出る前の味を知る人は数少ないのに
 お店に来られて食べて頂いた際
 『以前と味が違う』と仰られたので」


そう言われ
『失礼な事を言ってしまった…』と
挨拶もせず感想だけ言ってしまった事のお詫びと
改めてイトカは西園寺に自己紹介した。
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