冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
赤みに帯びたオレンジの月夜の下に
始まった宴会。
しかし
見惚れる程の満月は
時に人を狂わす―――
「いやぁー
柴永様の婚約発表には
本当に驚かされた」
「一時はどうなるかと思いましたが
さすが若社長は考え方が違いますね」
偶然イトカが料理を運んだテーブルは
高級スーツを身に纏い
酒を片手に盛り上がる異業種の社長達の席。
その話題はシバ社長。
多方面からも彼は知れているため
仕事での関わりがある人物ばかりだ。
そんな社長達の話に
つい耳を傾けてしまった。
「柴永社長は優秀だと思うよ。
苦労してきているからか言う事も言う男だが
若いのにしっかりしている」
「確かにそうだ。
突拍子もない事を言う人だが
必ず有言実行するから信頼出来る」
口々に次から次へと出てくるのは
シバ社長に対しての尊敬の言葉。
イトカにとって
初めて聞いた多方面からの社長の印象に
なんだが自分の事のように嬉しく思い
同時に、彼の人望だったり
影響を与える人脈だったり
改めて凄い人だと実感させられる。