冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】

「まったく…
 嗜む《たしなむ》程度しか飲めないのに
 どうして日本酒を
 しかもあんな量を飲んだんですか」


水を渡しながら
困った表情で溜め息を吐く西園寺は
呆れて怒っているようにも見える。


「すみません…
 なんだか、嬉しくてつい…」

「嬉しい…?」

「シバ社長が皆さんからどう思われているのか
 仕事ではどんな人なのか…
 まわりから話を聞く事は滅多にないから
 今日、初めて知れて良かったなって。
 あんなに人望があるなんて…。
 だからそれが嬉しい…」


月を見上げながら
目を閉じ、途切れ途切れ話すイトカ。


「木瀬様は…
 本当に柴永様を慕っているのですね」

「そう…ですね。
 あ、最初の頃は苦手でしたよ。
 思いやりとか人の気持ちとか考えない人で
 毎日パワハラでしたもん。
 ですが…
 本当はとても優しい人…
 いつも素っ気なく冷たい言い方ばかりで
 誤解されそうですが
 社長として精一杯全力で
 一生懸命なんですよね…
 傍にいる時間が多くなって
 最近それがわかってきました」


話に耳を傾けながらも
西園寺は、じっとイトカを見つめている。
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