冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
夜も更けてきて
賑わいを見せていた宴会も
そろそろ幕を閉じようとしていた時―――
「私の負けですね」
突然、西園寺からの敗北宣言。
何が”負け”なのか
皆目見当がつかないイトカは不思議に思い
彼を見つめ返す。
「そこまで柴永様を愛している方に
手は出せませんね」
「手・・・え…ッ!?」
「本当は…
公私ともに貴方を私のモノにしたかったんですが…」
ハッキリ言われた略奪の言葉。
今まで微塵も疑いを向けていなかっただけに
イトカは酔いが一気に冷めるほどの衝撃を受けた。
「木瀬様には他の方達とは違う魅力を感じまして
素敵な女性だなと…
それに、私の店でも働いてもらいたかったですよ。
和菓子の”味”にも必要不可欠な人材ですし…」
「わ、私がですか!?」
「はい。
ですが…純粋すぎてダメですね。
騙して働かせたつもりでしたのに
柴永様の為に純粋に頑張っているのを聞かされたら
嘘が突き通せなくなりましたよ。
彼にも貴方自身にも敵いませんね」
次から次へと告げられる西園寺の気持ちは
イトカにとっては、まるで何かの暗号。
幻聴なんじゃないかとさえ思うほど
信じられない言葉ばかり。