冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】

西園寺に対し
恐れと不信感しかなくなったイトカは
這ってでもココから帰りたくて
フラフラした足取りで歩きだす。


「木瀬様、落ち着いてください!
 今、柴永様に連絡しますので…」

「それだけはやめてッ
 怒られるッ」


西園寺に会う事を内緒にした上に
酒に酔って足元がおぼつかない等
社長が知ったらと思うと
ゾッと悪寒が走る。

だがそれは西園寺も同じ。


「えぇ…私もです。
 それでなくても貴方に手を出すなと釘を刺された時に
 すでに怒っていらしたんですから…」

「え…社長が?」

「はい…
 普段ほとんど表情に表さない柴永様が
 とても感情的になっていました。
 それほど貴方を想っているのでしょう…」


『そこまでわかっているのになぜこんな事…』と
イトカは溜め息を吐く。


「どちらにしても
 木瀬様をこのままにしておくワケにも
 私が送るワケにもいきませんので
 柴永様に連絡を―――」


西園寺が最後まで言い終わる前に突然…


「やっと見つけたぞ!!!」


噂をすればという事か。

屋外にも関わらず
響き渡る大きな声を発しながら
息を切らして走ってきた、シバ社長。
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