冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
聞きたい事も言いたい事も山ほどあるのに
腕の中で寝息を立てるイトカを見ていると
どうにも調子が狂い
複雑な思いで見つめるシバ社長。

思わず出た言葉は…


「普通、こんな時に寝るか?
 緊張感がない女だな…」


呆れた言い方をしながらも
愛おしそうなのは隠しようがない。


「柴永様。
 今回の件は私の責任です。
 彼女を責めないであげてください」


西園寺は腰を低くし頭を下げたが
何も答えようとしないシバ社長に
それほど機嫌が悪いんだと察してしまう。


「確かに私は下心があって木瀬様を誘いましたが…
 侮《あなど》っていました。
 彼女には全く通用しなかったようです。
 むしろ、敗北を思い知らされました…」

「それはどういう事だ?」


怒っていると理解した上で
西園寺が正直に話すと
その言葉にはシバ社長は反応。

目線こそ向けなかったが
先程よりは落ち着きを取り戻している。


「”柴永様に相応《ふさわ》しい妻になる”と
 ただそれだけの為に
 私のところに茶道や作法を覚えに来たのです。
 その人には決して
 疚しい気持ち等なかった…」
 


素直に全て伝えながら
西園寺は溜め息を吐いた。
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