冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
雑用で働くのに
どうして住み込みまでしないといけないのか
そもそもどこに住むのか
意味がわからず愕然とした。
「決まっているって…
住み込みで働くなんて聞いてません。
ってか、どこに住めって言うんです?
こんなセレブ街の家賃なんて払えませんよ」
「お前…よく喋るな。
少し黙ってくれ」
社長の発言以上の言葉数で
思った事を全部声に出したおかげで
社長は頭が痛そうに溜め息を吐いているし
その様子を見ていた秘書の鮫島は
イトカに対して冷笑している。
「住み込み先はこっちで手配する。
今日はもう帰れ。
俺も忙しいんだ」
「え、でもまだ…」
「出口はこちらです」
何がどうなっているのかわからないまま
秘書に促されて帰る羽目に。
『全力で頑張ろう』と
意気込んで面接にきた朝だったのに
帰りはまるで全身抜け殻のような脱力感で
建物を後にした。
「喜ぶべきなの…?」
ビルを見上げ
これから起きる出来事に
ただただ不安でしかない―――