冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
そんな社員を横目にしながら
『この社長は本物の悪魔だ』と
小さな溜め息を吐いてしまった。
「何か言いたそうだな」
地獄耳なのか
イトカの溜め息を瞬時に感知した社長の
背後から感じる冷たい視線に身の毛がよだつ。
「い、いえ?
特に何も?」
「粗方、俺への不満だろ」
『自覚あったんだ』と
喉元まで言い掛けて呑み込んだ。
さすがに社長に対してそこまで言ったら
クビになり兼ねないと察したから。
「そうだ。
お前にコレをやる」
そう言ってデスクの隅に置いてあった
白い小さなキャリー箱をイトカに差し出した。
「…なんです?」
明らかにそれは
菓子の入っている箱。
こんな冷酷社長が
自分にプレゼントするとは思えない。
まさか毒殺でも考えているんじゃないかと疑い
手を出す事に躊躇してしまった。
「安心しろ。
毒なんて入ってない」
思っている事が伝わったのか
心の声が聞こえてしまったのか
先に安全フラグを立てる社長。
断れきれなかった。
「じゃぁ…いただきます」
そう言ってキャリー箱を開けると
洋風和菓子が3種類入っている。