冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】

『秘書として選ばれたのは
 シバ社長が私を誰よりも特別に想っているから。
 私も彼を誰よりも尊敬している』


歪んだ忠誠心と
奪われる恐怖から
彼女の心は間違った方向へと進んでいった―――


「木瀬さん。
 まだ全然汚れているじゃないですか。
 掃除くらいまともにやったらどうです?」


社長と帰宅後
今まで物静かに淑やかだった鮫島は
人が変わったように殺伐とした態度と物言いで
直接イトカを罵倒した。

それはまるで
昔読んだ童話に出てくる継母のよう…。

だがしかし。
1つ違ったのは…


「あらそうですわね。
 他の床はすごく綺麗なのに
 鮫島秘書が歩いたところだけが汚れていきますね」


負けん気の強いイトカの性格だ。
屈するどころか売られた喧嘩を買っていく。


もちろんこんな態度
鮫島が社長の前でするはずもなく
留守を見計らっての横暴だった。


「あ、シバ社長!
 おかえりなさいませッ
 珈琲をご用意しました!
 あと…その…
 珈琲に合うお菓子も作ったので宜しければ…」


社長が戻ってくれば
秘書ではなく”女”としての変貌ぶり。
いつの間にか用意していた手作り菓子を差し出すほど。
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