冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
社長の心底迷惑そうな表情に
イトカは『そうなるよな』と苦笑。
和菓子の時のやりとりは鮫島は知らない。
だから社長が甘いモノが大の苦手だという事も
もちろん知る由もないのだ。
「お…おう、貰っておく…
鮫島、ココはもういいから
自分の仕事に戻れ…」
「あ、はい。
では失礼します」
背筋の良い会釈をした彼女は
通りすがりにイトカを嘲笑いながら
社長室を後にした。
「鮫島って…
以前からあんな感じだったか…?」
急な変貌ぶりは社長も気付いていたらしく
悪い夢を見たように青ざめている。
「秘書も”女”だったって事ですよ。
だからちゃんと食べてあげてくださいね、それ」
「無理に決まってんだろ。
お前にやる」
「いらないです」
「は?社長命令だぞ」
「命令でも絶対イヤですよ。
(極甘な)毒が入っていそうだし。
なので私も仕事戻りまーす」
「お、おいッ」
珍しく焦った様子の社長に
『お気の毒に』と思いつつ
社長に宛てた菓子を食べる事はなかった。
鮫島が社長に対して
秘書以上の気持ちが入っている事は
イトカにはわかっていたから。