冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
4章:社長の優しさ?
発端となった鮫島はというと
ばつが悪いのかイトカとは
一切、口を利かなくなった。
もともと口数の少ない彼女だが
挨拶どころか顔も見なくなったのは
よっぽど気に入らないから。
しかし社長の前でそんな態度も取れないため
彼女なりの些細な抵抗。
イトカ自身も
『喋らなければ喋らないで揉めなくていいや』と
さほど気にしてもいなかった。
そんな事もありながら
シバ社長の下で働くようになってから
ようやく1か月が経とうとしていた―――
「我ながら掃除のセンスを感じる」
磨き終わった社長室の壁一面の窓ガラスを見つめ
『うんうん、上出来』と自画自賛していると。
「おい、まだ次の仕事が残ってる」
鬼教官のようなスパルタ社長の指令が下る。
「はいはい。
次はどんなご用件でしょうか」
「”はい”は一回だ。
いくつかの店舗から試案の返答を頼まれた。
お前も手伝え」
そう言って各店舗から預かった大量の資料を
デスクに広げ始めた。
「いやそれはさすがに社長の仕事じゃ…」
「文句は受け付けない」
あいかわらず扱いは雑だが
軽く流す気持ちで引き受けてはいるが…。