冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
本来、あってはならない事だが
シバ社長の秘書になろうとしていたにも拘わらず
彼の経歴を調べてなかったイトカ。
実はこの社長、元はプロの料理人で
このビルの会員制バーと高級レストラン経営者でもあるのだ。
だから当然
料理も出来る。
専門分野なのだから当たり前だ。
「俺自身の生活リズムが不規則だから
家で作る事は滅多にないし
飯はビル内で済ませているんだ」
「あー…そうだったんですね…」
絶食悪魔だと思っていた社長は
ごく普通の人間だったんだなと納得。
初めて知った真実だ。
「食ったら後片付けはいいから
お前はもう少し寝ろ」
「え、でも仕事…」
「今日は休め。
休養が社長命令だ。
それと今後はしっかり飯を食え。
また倒れられても困るからな」
「はぁ…」
昨日からの社長の優しい態度が妙で
本当に同一人物なのかとさえ疑ってしまうほど
その変わりように調子が狂う。
同時に
不思議な気分
初めて知る意外な一面に
胸の奥がざわついた――
社長の優しい命令に素直に甘え
だだっ広い豪邸で1人
大人しくゆっくり休ませてもらい
後日、心身共に復活したのだった。