冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
そんなイトカに社長は…
「やめろ。
あの人に何を言っても無駄だ」
険しい表情でピシャリとアウト。
本当に金我には頭が上がらない事が伺えた。
それでもイトカは言う。
「すみません…
例え社長命令でも
今は聞けません」
神妙な顔つきで言い残し
走って追いかけた―――
我が物顔で踏ん反り返る金我に
オフィスビル内の誰もが頭を下げて道を譲っているが
イトカはそんな事は気にしない。
「金我様ッ
どういうおつもりですかッ!?」
興奮で呼び止めた声が大きくなってしまい
まわりの人々が目を丸くして驚いている。
「社長の婚約者殿。
何の話かね?」
「惚けないでください!
社長の後任だなんて…
会社を乗っ取る気じゃないですかッ」
「…なんだと?」
イトカの言葉が逆鱗に触れ
金我の表情は一瞬にして厳しい目つきへと変わる。
「乗っ取るとは失敬だな。
キミのような小娘にはわからないだろうが
今の柴永取締役社長の信用は失墜している。
早かれ遅かれこうなる運命。
もはや誰にも止められない」
衝撃が走った―――