冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
「お疲れ様です、社長」
「何をしているんだ?」
「何って…料理ですけど?」
「それは…そうだろうな」
お玉片手に言うのだから
誰が見たってすぐわかる。
社長自身も
『そういう事を聞いているんじゃない』と
以前イトカが社長に対して思った気持ちと
まんま同じように答えていた。
「ちょうど今出来上がったので
座ってください」
そう言いながら
イトカは食事をテーブルに並べていく。
焼鮭と肉じゃが
ほうれん草の胡麻和えに味噌汁付きで
まさに一般的な家庭料理。
「お前コレって…」
「社長みたいにフレンチやイタリアンは
さすがに無理ですけど…
たまには定番料理も悪くないかなと…」
『お口に合うかわかりませんが』と
謙遜している前で
社長は1品ずつ口に運ぶ。
「…まぁまぁだな」
「嘘でも美味しいって言えませんかね」
「俺は嘘はつけない」
「はいはい、そうでしたね。
シバ社長はそういう御方でした。
よく存じておりますよ」
『まぁ社長らしいか』と
元気そうな事に少し安堵。
憎まれ口がなくなったしまったら
それこそ大病な気がするから。