冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
「それが、私にもわからないのです。
今朝から1度も姿を見掛けていなくて
出社していないようですし
無断欠勤でしょうか…」
本当に鮫島も知らなかった。
イトカは誰にも告げずに去っていたから。
「アイツ…まさかッ」
鮫島の言葉に不穏な予感がした社長。
急いでイトカの携帯に連絡するも
電源が入っていないとのアナウンスで通じない。
「社長ッ!?」
鮫島の呼び止める声は耳にも入らず
彼は社長室を出て行ってしまう。
真っ先に向かった先は自宅。
部屋は綺麗に片付けられており
荷物は何1つ残っていない。
そしてそこで見つけた手紙に
イトカが自分のために出て行き
もう帰ってこない事を悟った。
「あのアホ…何考えてんだッ」
何も解決していないまま勝手に出て行った事で
怒りと焦りが半々に
家を飛び出した――――
その頃、実家へと帰ってきたイトカは
住み慣れた自身の部屋のベランダから
微かに遠くに見えるリーベンビルズの建物を眺めながら
物思いにふけていた。
あの場所に
先程まで自分がいたとは思えないな…と。