ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
0.出会い
隆春
4月。
2週間の新入社員研修を終えて、配属先が決まった。
「須藤隆春です。よろしくお願いします」
チームの先輩達の前で頭を下げる。
暖かい拍手の中、顔を上げる。
緊張してるから、顔なんて覚えられそうもない。
大丈夫か、俺。
「じゃあ、中村は本田、須藤は小田島にくっついて、いろいろ教わって」
課長が言うと、女性と男性が1人ずつ一歩前に出て会釈する。
「小田島です。よろしく」
男性が言う。俺はこの人に教わるんだ。
大人の男性という感じ。爽やかさがあって、話しやすそうだ。ちょっとホッとする。
「本田です。よろしくお願いします」
同じチームに同期はもう1人いる。中村という女性だ。中村さんが教わるのが、この女性。
「たまに出張とかでいない時があるから、その時はいる方に聞いてね。みんな優しいから、誰に聞いても教えてくれるけど」
柔らかい話し方。聞いていると心地良い、ソフトな声。
ふわふわっとした印象の人だ。この人も話しやすそうで良かった。
それぞれのデスクに案内される。
デスクの島の端、小田島さんの真向かいが俺。
俺、本田さん、中村さんの順に並んでいる。
自分のデスク、と思うと、なんだか身が引き締まる。
小田島さんが、ファイルを俺に差し出した。
「早速だけどこれ。パソコンのセットアップマニュアルだから。終わったら声かけて」
「はい」
ファイルを受け取る。
横からソフトな声がした。
「小田島さん、その前に備品の確認ですよ」
「あ、そっか。ごめん、忘れてた」
備品リストを受け取って、デスクにある物を確認していく。
隣から、中村さんの低めの声が聞こえる。
「本田さん、他に使いたい文房具があったらどうするんですか?」
「総務にあるかどうか聞いてみて、なかったら注文してもらうの。特殊な物は自分で買って、後で精算ね」
本田さんの声は、やっぱりソフトだ。
研修の時の、同期の女性達のキンキンした高い声を思い出す。それだけで頭痛がしそうだった。
良かった、隣が本田さんで。
安心して毎日過ごせそうだ。
とりあえず出だしは順調かな。
パソコンの設定をしながら、緊張がほぐれていくのを感じていた。
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