ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
3. 6月
隆春
もうすぐ梅雨に入ろうかという頃。
段々、仕事をする、ということにも慣れてきて、慣れてきた頃にはミスをする。
「すみませんでした」
小田島さんのフォローを受けて、頭を下げる。
「いいよ。誰でもミスはする。大事なのは、その後だから。くどくは言わないからな」
「はい……すみませんでした。ありがとうございます」
その時、近くを通り過ぎようとしていた本田さんが足を止めた。
目を丸くして、俺を見ている。
「……あの?」
「どうした本田」
「いえ。なんでもありません」
首を振って、席に戻っていった。
「じゃ、昼までにやり直して」
「はい」
席に戻って、両手で頬を軽く一発たたく。
気を引き締めて、頑張ろう。
パソコンに向かうと、本田さんがこそっとささやいた。
「がんばって」
お礼の代わりに、笑って頷く。
本田さんも、笑顔をくれた。
午後になって、中村さんもミスをしたらしかった。
「すみませんでした」
本田さんに頭を下げている。
「うん、大丈夫。でも同じことを繰り返さないように、やり方工夫してね」
「はい……」
「その工夫を考えて、明日……は土曜日か。週明けに教えて。宿題ね」
「……わかりました」
割と強気な感じの中村さんが、大分落ち込んでいるようだ。背中の後ろに暗い雲をしょってるように見える。
俺も人事じゃない。
午前中のミスはやり直してOKは出た。
でも、同じミスをしない補償はどこにもない。
さっき本田さんが言っていた『工夫』をしなければいけない。
俺は宿題として出されてはいないけど、やらなければいけないと思う。
本田さんを挟んで、俺と中村さんは、うなりながら考える午後を過ごした。