ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜


「はるちゃん、歩きにくい」
 しばらく歩いてからそう訴えると、肩を離してくれた。
「ごめん……」
 しゅんとしちゃって、可愛い。
「あいつ、何言ってたの?」
 気になるんだね。まあそうだよね。
「ゴールデンウィークに会った時、私の話をしてデレデレしてたって」
 そう言ったら、顔が赤くなった。可愛い。
「……いい、自覚あるから」
 お、開き直ってる。
「それより、さっきの」
「さっきの?」
「俺、一言も話してないから」
 真面目な表情で、まっすぐに言う。
 あの女の子達のことだ。
「うん……わかってる」
 ぎこちないだろうけど、笑顔を作った。

 わかってる。
 はるちゃんは、私のことを好きでいてくれて。
 いつでも、私のことを考えてくれている。
 その気持ちには、揺らぎはない。

 わかってるよ。
 問題は、私の方にあるんだ。

 あの子達みたいに、はるちゃんと同じ年くらいの人が並んでるのを見ると、やっぱり思ってしまう。
 5つも年上の私より、同い年とか年下の人の方が、はるちゃんに似合うんじゃないかって。
 さっきの子達や総務の原田さんみたいに、同期でおしゃれも上手くて、女の子っぽい人の方がいいんじゃないかって。
 今時、年上の女性と付き合うなんて珍しくない。でも、私は年上とは言っても、女子力は低いし、大人の色気とか皆無だ。

 こんなこと、思うことはくだらないってわかってもいる。
 目の前の、はるちゃんを信じていればいい。

 でも。
 やっぱり気になってしまって。

「千波さん」
 ハッと気付く。
 はるちゃんが、何か言いたげに私を覗き込んでいた。
「ごめん、なんだった?」
「さっきの店、もう一回行こうかって話してた」
「ああ、そうだね。抱き枕しか見なかったもんね」
 ちょっと戻って、雑貨店に入る。
 結婚祝いに良さそうな、夫婦箸とスプーンとフォークのカトラリーセットを見付けて、それを買った。私も、気持ちばかり出させてもらった。
「ちゃんと伝えておくから。あいつらも喜ぶと思うよ」
「うん」
 やっと、普通に笑うことができた。
 はるちゃんにもそれは伝わって、ホッとしているみたいだった。



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