ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
その週の土曜日。
無事に納品が終わり、打ち上げがあった。
解放感たっぷりで、私も久しぶりにお酒を飲んだ。
居酒屋を出ると、二次会どうする、と盛り上がっていた。
「千波先輩はどうしますか?」
葵ちゃんに聞かれる。彼女はお酒にはとっても強いらしい。全然酔ってない。
「結構飲んじゃったから帰ろうかな」
「えー残念」
「また飲みに行こうね」
葵ちゃんとハグをして、他の人にも挨拶をして、駅に向かった。
電車を待ちながら、はるちゃんにメッセージを送る。
ーーー終わった。今電車に乗るとこ。
ーーーお疲れ様。1人?
ーーーうん。
返事を返して、少し迷ったけど、今日ずっと思っていたことを文字にしてみた。
ーーー行ってもいい?
はるちゃんからの返事はすぐに返ってきた。
ーーー駅まで行く
予想通りの返事だった。
それでも嬉しくて、顔がにやけてしまう。
きっともうくつろいでいたところだと思うと申し訳ないんだけど、断っても多分来てくれるから、素直に受けることにした。
ーーーよろしくね
既読にならない。
バタバタと出かける準備を始めたんだろう。見えるようだ。
きっと、私が乗る電車より早く駅に着いていて、改札の前で待っていてくれる。
ほら、いた。
背が高くて、遠くからでもすぐに見付けられる。
多分、もうお風呂にも入った後。やっぱり申し訳なかったな。
私を見付けると、にこっと笑った。
私が好きな、可愛い笑顔。
改札を抜けて、はるちゃんの前に立った。
「おかえり」
とくん、と、胸が高鳴った。
鳴ったところから、あったかいものが全身に広がっていく。
自然に。
何も考えずに、笑顔を返せた。
「ただいま」
並んで歩き始めると、いつものようにはるちゃんは私の手を取った。
しっかりと、守ってくれるように、手をつなぐ。
「お疲れ様。打ち上げ楽しかった?」
「うん。結構飲んじゃったから、お酒くさいかも」
「俺も飲んでたから、同じだよ」
「飲んでたの?」
「うん、一人飲み」
「いいね〜。何飲んでたの?」
「日本酒」
「あ、この前実家から届いたって言ってたお酒?」
「そう。おいしいかったよ。明日、一緒に飲もうか」
「わあ、飲みたい」
「じゃあつまみ何か作る?」
「日本酒でしょ?やっぱり……」
「だし巻き」
「作ってくれる?」
「いいよ」
「じゃあ、私は」
「この前の、キュウリのごま油和え」
「え?あの塩昆布と混ぜたやつ?」
「そう。あれおいしかった」
「塩加減難しいんだよね……わかった、頑張る」
「やった」
2人で笑い合って歩く。
はるちゃんの手はあったかい。
はるちゃんの隣はあったかい。
私、幸せだ。
はるちゃんの笑顔を見ていたい。
私が笑えば、はるちゃんも笑う。
2人でいれば、簡単なこと。
だからこそ、忘れてしまわないように。
見失わないように。
この温もりを、いつまでも感じていられますように。