ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜


 結婚式と披露宴は無事に終わった。
 浩紀はカッコ良かったし、さやかも綺麗だった。
 千波さんのウェディングドレス姿も見たくなった。可愛くて、綺麗だろうな。
 でも、結婚式や披露宴は恥ずかしい。見てるのも恥ずかしいから、自分がやるとなるともっと恥ずかしいに違いない。
 でもやらないと、千波さんのウェディングドレス姿は見られない。
 なんとかならないものかと考えているうちに、披露宴が終わってしまった。

 結婚式が始まる前に浩紀とさやかと撮った写真を、千波さんに送った。
 俺1人の写真もほしい、という返事が返ってきたので、出かける前に家で母さんに撮ってもらった写真を送る。

 ーーーカッコいいね

 そんな返事が返ってきて、顔がほてった。
「あらーニヤけた顔」
 車の中、母さんにからかわれる。
 2次会には出ない、と言ったら、迎えに来てくれたのだ。ついでに母親同士で話に花を咲かせていた。
「良かったわ、隆春にもちゃんとした彼女ができて」
 しみじみ言っている。
「なに、人をなんだと思ってたの」
「だって、好かれることはあっても、あんたから好きになることってないっぽかったって、さやちゃんが言ってたから。千波さんにはベタ惚れなんでしょ?」
「それもさやか?」
「さやちゃんが言ってたって、美久ちゃんが」
 美久ちゃんとは、さやかのお母さんだ。
「隆春がベタ惚れね……おばあちゃんが生きてたら喜んだわよ、きっと」
 くくく、と笑う。
 母さんは、しょっちゅう俺と隆明をからかって楽しんでいる。
 下手に何かを言うと、10倍くらいになって返ってくる。
 唯一の対抗手段は、黙ってること。
 これも、無口になった原因の一つだろう。
「その、あんたのベタ惚れっぷりを見たいから、千波さん連れて来なさいよ」
「……そのうち」
「えっ?」
「なんだよ」
「てっきりやだって言うかと思ったのに。へえ〜」
「……」
「本気なのねえ。楽しみ〜」
 母さんのご機嫌な鼻歌を聞きながら、千波さんの顔を思い出す。
 会いたくなった。



 次の日、ばあちゃんの墓参りをして、昼過ぎの新幹線に乗るために、父さんが駅まで送ってくれた。
「千波さんによろしく」
「え……」
「大事にしろよ」
 父さんからそんな言葉が出てくるとは思ってなくて、ぽかんとしている間に、車は行ってしまった。

 家族はみんな、俺と千波さんのことを歓迎して応援してくれているらしい。
 嬉しいし、なんとなく気が引き締まる。
 早く紹介できるように、頑張ろう。

 そう思ったら、千波さんに会いたくなった。
 いや、ずっと会いたいとは思っていた。
 たった2日会ってないだけなのに、凄く会いたい。

 新幹線の中で、メッセージを送る。

 ーーー新幹線乗ったよ

 ーーー気を付けて帰ってね

 ーーー今日は家にいる?

 ーーーいるよ。のんびりしてる

 ーーー行ってもいい?

 ーーーそのまま来るの?

 ーーー家に一回帰って、明日の用意して行きたい

 つまり、泊まりたいってことだ。
 やや間があって、返事が来た。

 ーーーいいよ。買い物するから、駅で待ち合わせね

 ーーー時間わかったら連絡する

 やった。やっと千波さんに会える。
 新幹線に乗ってる時間が、長く長く感じた。



< 129 / 130 >

この作品をシェア

pagetop