ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
一度家に帰って、荷物を置いた。
スーツだけはかけておいて、明日会社に行く時の服と、チームへのお土産、千波さんへのお土産を持つ。
今回は、犬グッズシリーズのキーホルダーだ。千波さんからリクエストがあったのだ。
出る前に、母さんに着いたことを伝えるメッセージを送る。
それから、千波さんにメッセージを送った。
今買い物してるので、着く頃に改札前にいてくれるそうだ。
俺は、はやる気持ちを抑えながら、駅に向かった。
早く。
早く会いたい。
千波さんのことは、遠くからでもすぐに見つけられる。
改札から出て行く人の中に、俺を捜してくれている。その様子も可愛い。
俺を見付けると、ぱっと花が咲いたように笑顔になった。
あの笑顔に、会いたかった。
改札を出て、千波さんの前に立つ。
千波さんは、笑顔のまま。
「おかえりなさい」
ああ、やっと聞けた。
俺だけの「おかえりなさい」だ。
何度でも聞きたい。
俺も言いたい。何度でも。
「ただいま」
笑顔を交わす。
幸せだ、俺。
千波さんからエコバッグを受け取って、代わりにお土産が入った紙袋を持ってもらって。
空いた手を、どちらからともなくつないで歩き出す。
「どうだった?結婚式」
「いい式だったと思うよ。お母さん達ぼろ泣きだった」
「はるちゃんは?泣いてないの?」
「うーん……ちょっとじわっときたかな」
「えー……見たかったなあ、そのはるちゃん」
「……それはいいから」
「残念」
「千波さんに、お祝いありがとうって言ってたよ。毎日使ってるって」
「そうなの?嬉しい。良かった〜。受付は?ちゃんとできた?」
「うん大丈夫、お金はホテルの人がやってくれたし」
「そっか」
「料理がおいしかったよ」
「いいなあ。今度作ってよ」
「フレンチのフルコースだよ、無理無理」
「じゃあ、今度行こ。フレンチのお店」
「高級レストラン?」
「うーん……カジュアルフレンチの方がいいかな」
「ははは、俺も」
「じゃ約束ね」
「うん」
次の約束の中に、2人がいる。
それが自然で、それが当たり前で。
2人でいることが、嬉しくて。
つないだ手はあったかい。
そのあったかさは体中に広がって。
このあったかさがあれば、何があっても大丈夫だと思えた。
来月も。来年も。その先も。
じいちゃんとばあちゃんになっても。
この手を離さないと誓う。
ずっと一緒に、歩いて行く。
ずっと一緒に。