ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
マンションに着くと、本田さんはまた俺の左腕を拭いてくれた。
「ごめんね、また濡れさせちゃって」
「ありがとうございます……」
一所懸命に拭いている姿も、可愛いと思った。
「じゃあ、また明日」
俺はそう言って、帰ろうとした。
「あ、あの、須藤君」
本田さんの声に振り返る。
「本当は、ちょっと上がってもらったりしてお礼するところなんだろうけど、部屋が散らかってるから上がってもらえなくて」
言いながら、本田さんの段々顔が赤くなってくる。
それも可愛いと思ってしまう。
「だから、明日、お昼ご飯ごちそうするから、それでお礼にさせて」
それは凄く嬉しいんだけど。
「すいません、明日も外周りに行く予定で……」
「えっ、あっそうなんだ。そっか、じゃあ明後日かな」
「明後日は、明日にならないとわからないって、小田島さんが言ってました」
「あれっそうなの?やだなあもう」
「……じゃあ、明後日、外出しなかったらお願いします」
本田さんは、ぱっと笑顔になった。
「うん。じゃあ予定わかったら教えてね」
「はい」
俺が頷くと、満足そうに手を振る。
「お疲れ様。今日はありがとう」
「じゃあ、失礼します」
軽く会釈して、歩き出す。
曲がり角で見たら、本田さんはまだ見送ってくれていた。
俺が見たのに気が付いて、手を振る。
それも、可愛い。
俺は、頭だけを下げて角を曲がった。
後ろ髪は、長く長く引かれた。