ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
千波
昼休み。
新人さん達の様子を窺う。
同期の人と約束があればそれでいいんだけど、何もないならお昼ご飯に誘う。
これも教育係の仕事の一つだ。
いつ切り出そうかと思っていたら、中村さんに聞かれた。
「本田さんは、お昼ご飯はどうしてるんですか?」
「私は、食べに出たり、たまにお弁当買ってきたりかな」
「今日ご一緒してもいいですか?」
「もちろん」
笑顔で答えた。
中村さんは物怖じしないタイプのようで、初日からたくさん質問をしてくる。
私は、実はかなりな人見知りで、話しかけるのが苦手なので、聞いてくれる方がありがたい。
後ろから、小田島さんがファイルを私に渡しながら言う。
「俺も連れてって、本田。須藤は?なんか約束とかある?」
須藤君はパソコンからこっちを向くけど、表情を変えずに答える。
「いえ、特には」
「じゃ行くか」
「お願いします」
無愛想ではないんだけど。これは、クール、というのかな。
黒の細いフレームの眼鏡が、その雰囲気を冷たく見せる。
けど、その奥の瞳は優しそうかな、と思うんだけど。違うかな。
髪はサラサラで、真面目そう。
なんと言っても背が高い。
小田島さんも高い方だと思うけど、それよりも高い。180cmは絶対ある。
スラっとしてて、手足も長いし。
人気出そうだなあ。
そうすると、隣の席の私にいろいろ聞いてくる人も多いんだよなあ。
伊達に長く働いていないので、上手くかわす術も身に付けてるけど。
揉め事はできるだけ避けたい。それよりも仕事してたい。
須藤君も、そのタイプだとありがたいんだけどな。
近くの定食屋さんに4人で入る。
小田島さんが話し上手なので、なんとなく会話は続く。
その会話から、どうやら中村さんはサッパリしてて、女同士群れるタイプではないらしい、ということがわかった。
良かった。正直、群れてるのが好きな女性は苦手だったから。
須藤君は、口数は少ないけど表情は柔らかい。
時々見せる笑顔は可愛くて。
うん、やっぱり人気出るわ、この人。
いろいろ聞かれるのは覚悟しておこう。
でも、中村さんも須藤君も、一緒にいて嫌な感じは全くない。
良かった。当分隣の席にいるんだし、居心地はいい方がいい。
幸先のいい年度始めで、私はホッとしながら、塩サバ定食を口に運んだ。