ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
10. 1月
隆春
年末年始は帰省した。
毎年そう変わりはないけど、年明けに千波さんからメッセージをもらって、めちゃくちゃ浮かれた。
千波さんが撮ったであろうケンさんの写真も付いていた。相変わらずもふっとしていて、触ったら気持ち良さそうだ。
結婚できたら、ケンさんにも会えるんだろうか。
そんなことを考えると、つい浮かれてしまう。
でも、結婚は浮かれてばかりではいられない。というのは、俺でも知っている。
この休みを利用して、結婚についてちゃんと考えよう、と思った。
初詣行こうぜ、と幼なじみの下村浩紀が誘ってきた。
浩紀は保育園から中学まで一緒で、家も近い。今は地元で就職している。学校が別になったら疎遠になるかと思ったけど、なんだかんだで付き合いは続いている。母親同士が仲がいいせいもあるかもしれない。
夏は浩紀が忙しくて会えなかったので、今回は会おうと約束していた。
「よっ隆春、久しぶり」
「おー」
家まで迎えに来てくれた浩紀は、あまり変わっていなかった。会うのは一年ぶりだ。
「隆春、また背伸びた?」
「んな訳ない、もう止まってる」
「えー、俺ももう伸びないかな」
「さあ、どうだか。牛乳飲め、魚食べろ」
ゲーという顔をする。浩紀は小さい頃から牛乳も魚も苦手だ。
でも、中学の時には、背が低めなのを気にして、我慢して飲んだり食べたりしていた。母親に交渉して、カルシウムのタブレットを買っていた時もある。
170cm。充分だと俺は思うけど、俺が言っても「嫌味か」と言われるので、黙っている。
浩紀は普段車で移動するけど、今日は歩き。この後飲みに行こうとしているらしかった。
「隆春、仕事どうだよ」
「順調、だと思う。楽しいよ」
「そっか。職場の人は?」
聞かれて、真っ先に思い浮かぶのは千波さんの笑顔。
「うん、いい人に恵まれた。残業は多いけど」
「……ねえ、お前なんで顔赤いの?」
「えっ⁈」
全然意識してなかった。
「え、もしかして、職場で彼女でもできた?」
「いや、そうじゃない。まだそんなんじゃないし」
「うっそ、てことはなに、片思い?お前が?」
「……どういう意味」
「女には興味無さそうだったのに。ちょっと話しただけで赤くなるって。どんだけだ」
「浩紀うるさい」
「えー教えてよ、どんな人?可愛い?」
「…………可愛い」
「うわ……まさか隆春の口からそんな言葉を聞く日が来るとは」
近所の神社にお参りして、近くの居酒屋に行った。
歩いて行く間に、浩紀は俺から千波さんの話を聞き出している。きっと、これから会うもう1人に報告する気だ。